2026年9月30日
「せっかく糸リフトを受けるなら、できるだけきれいな状態を長く保ちたい」
糸リフトを受けた方、これから施術を検討している方から、よくいただくご相談です。
糸リフトの仕上がりを守るために大切なのは、特別なマッサージやトレーニングをすることではありません。むしろ、施術後約1ヶ月の間、適切な位置に入れた糸と周囲組織へ余計な外力を加えないことが重要です。
特に気をつけたいのは、顔を強く揉むこと、無理に口を大きく開けること、頬を枕へ長時間押しつけること、ご自身で凹凸や左右差をマッサージして直そうとすることです。
ただし、これらを守れば糸リフトの効果が必ず長く続くと保証できるものではありません。効果の現れ方や持続期間は、使用する糸、挿入する層・方向・本数、もともとの脂肪や皮膚の状態、たるみの程度などによって異なります。
この記事では、当院が糸リフト後の約1ヶ月をどのように考え、日常生活で何に注意していただいているかを解説します。
糸リフトは「入れた瞬間が完成」ではありません
糸リフトでは、糸の表面にある小さな突起である「コグ」を、皮下の脂肪や周囲組織にかけます。コグが組織をとらえることで、下がった脂肪や軟部組織を移動させ、引き上げた位置で支えるのが基本的な仕組みです。
施術直後は、主に糸とコグによる物理的な支持が働いています。その後、糸の周囲では修復反応が起こり、結合組織が形成されながら、時間をかけて組織が作り替えられていきます。
当院では、施術後約1ヶ月を、糸と周囲組織が落ち着いていく初期の安定期として重視しています。一般に「糸が定着する」と表現されますが、ちょうど1ヶ月で組織の変化がすべて完了するという意味ではありません。
この期間は、顔をまったく動かしてはいけないわけではありません。日常会話や自然な笑顔まで我慢する必要はありませんが、糸へ不要な力が繰り返しかかる動作はなるべく減らすことが大切です。
長持ちさせる基本は「余計な外力を加えないこと」
糸リフト後に避けたい外力は、大きく3つに分けられます。
1.押す・揉む・ずらす力
顔のマッサージ、かっさ、美顔ローラー、強いクレンジング、エステなどです。
2.大きく引き伸ばす力
大きなあくび、大きな食べ物へのかぶりつき、痛みを我慢して口を大きく開ける動作などです。
3.長時間圧迫する力
うつ伏せ寝、頬を枕へ押しつける横向き寝、長時間の頬杖などです。
一度大きく口を開けたり、寝返りを打ったりしただけで、すぐにすべての糸が外れるわけではありません。
一方、強いマッサージ、大きな開口、頬への長時間の圧迫などは、コグや周囲組織に不要な負担をかけ、痛み、引きつれ、違和感、位置の変化につながる可能性があります。
糸リフト後約1ヶ月に気をつけたい7つのこと
1.顔のマッサージをしない
糸リフト後に特に気をつけていただきたいのが、顔のマッサージです。
当院では、施術内容にもよりますが、顔のマッサージや顔へ強い力を加える美容施術は、施術後約1ヶ月控えていただくようご案内しています。
避けていただきたい行為には、次のようなものが含まれます。
- 小顔マッサージ、リンパマッサージ
- かっさ、美顔ローラー、電動マッサージ機器
- エステサロンでのフェイシャルトリートメント
- 頬やこめかみまで強く圧迫するヘッドスパ
- 皮膚を横へ大きく動かすクレンジング
- 凹凸や左右差を直すための自己流マッサージ
洗顔やスキンケアそのものを中止する必要はありません。洗顔料をよく泡立てて強くこすらずに洗い、タオルで拭くときも押さえるように水分を取ってください。化粧水や乳液も、皮膚を大きくずらさず、手のひらでやさしくなじませます。
2.口を無理に大きく開けない
糸リフト後は、口を開けたときに耳の前、頬、フェイスライン付近につっぱり感や痛みを感じることがあります。
この時期に痛みを我慢して口を大きく開けると、糸や周囲組織に負担がかかる可能性があります。
施術後しばらくは、次のように工夫してください。
- 食べ物は小さめに切ってから口へ運ぶ
- 大きなハンバーガーやサンドイッチへ、そのままかぶりつかない
- 硬い食べ物や、長時間強く噛み続けるものを無理に食べない
- あくびが出そうなときは、手で顎を軽く支える
- 痛みがある状態で無理な開口訓練をしない
通常の会話、歯磨き、無理のない範囲の食事まで制限する必要はありません。
歯科治療の予定がある方は、糸リフトを受けたことを歯科医師へ伝え、長時間口を大きく開ける処置が必要か確認してください。ただし、痛みや感染などで急を要する歯科治療を、ご自身の判断で延期してはいけません。緊急性のある場合は歯科治療を優先し、当院にもご相談ください。
3.うつ伏せ寝や、頬を強く押しつける横向き寝を避ける
眠っている間は、無意識に顔を枕へ押しつけることがあります。
特に施術直後から腫れや痛みが落ち着くまでは、可能であれば仰向けで休むことをおすすめします。首の左右に小さな枕や丸めたタオルを置くと、寝返りを減らしやすくなります。
ただし、夜中に一度横向きになっていたからといって、直ちに糸リフトが失敗したと判断する必要はありません。
新たに強い痛みが出た、急に片側だけ輪郭が変わった、大きな凹みや引きつれが現れたなどの変化がなければ、慌てずに経過を確認してください。
4.フェイスバンドは「補助」として使用する
当院では、挿入した糸の種類や位置、腫れの程度、生活環境などを確認し、必要な方には就寝時のフェイスバンドをご案内することがあります。
フェイスバンドは、コグを直接固定したり、装着するだけで効果の持続期間を延ばしたりする器具ではありません。
主な目的は、次のような補助です。
- 就寝中に頬を枕へ強く押しつけることを減らす
- 無意識に顔を触ることを減らす
- フェイスラインをやさしく支える
一日中無理に装着する必要はありません。当院から使用を案内された方は、寝るときだけでも装着する方法があります。
ただし、締めつけを強くすれば効果が高まるわけではありません。強い痛み、しびれ、皮膚の色の変化、息苦しさ、傷口への強い圧迫が生じる場合は外し、当院へご連絡ください。
使用する製品、装着位置、期間については、施術を担当した医師の指示を優先してください。
5.HIFU・高周波・強い美容施術を自己判断で重ねない
糸リフト後すぐに、HIFU、高周波、深部加熱を伴う機器、強いフェイシャル施術などを重ねることはおすすめしていません。
これらの治療は、機器によって熱が入る深さや作用する層が異なります。糸の素材、挿入した深さ、治療部位によって適切な再開時期も変わります。
当院では、顔のマッサージや美容施術について、まず施術後約1ヶ月を目安に控えていただき、その後も治療内容に応じて再開時期を判断します。
「1ヶ月過ぎたから、どの施術でも受けてよい」と自己判断せず、施術を受けるクリニックへ糸リフトを受けた時期と部位を伝えてください。
6.凹みや左右差を自分で揉んで直そうとしない
糸リフト後は、腫れ方の違い、麻酔液の残り方、組織の引き上げ方などによって、一時的な凹凸や左右差が見られることがあります。
軽度の引きつれや左右差は、腫れが引き、表情がなじむにつれて改善する場合があります。
気になるからといって、自宅で強く押したり、揉んだり、皮膚を引っ張ったりしないでください。
状態によっては、医師が糸の位置や皮膚の状態を確認したうえで調整を行うことがあります。しかし、これは解剖や糸の走行を確認したうえで行う処置であり、自己流のマッサージとは異なります。
凹みや左右差が気になる場合は、まず写真を撮り、当院へご相談ください。
7.違和感が強いときは「1ヶ月待つ」のではなく相談する
糸リフト後のつっぱり感、押したときの痛み、軽い凹凸などは、時間とともに落ち着くことがあります。
一方、すべての症状を「糸がなじむ途中」と考え、我慢し続けることも適切ではありません。
次のような症状がある場合は、経過日数にかかわらず早めにご連絡ください。
- 腫れや痛みが日に日に強くなっている
- 急に片側だけ大きく腫れた
- 赤み、熱感、膿、発熱がある
- 糸が皮膚や傷口から出ている
- 口が開けにくく、食事や水分摂取に支障がある
- 急に強い凹みや大きな左右差が現れた
皮膚から出た糸を、ご自身で引っ張ったり切ったりしてはいけません。
呼吸が苦しい、意識がおかしいなど緊急性の高い症状がある場合は、当院からの返答を待たず、救急医療機関へご連絡ください。
術後1ヶ月の過ごし方の目安
当日〜3日
顔を押す・揉む・こする動作を避けます。無理な大あくびや、頬を枕へ強く押しつける寝方にも注意します。
1週間ごろ
腫れや痛みが軽くなっても、強いマッサージや痛みを伴う大きな開口は引き続き避けます。
2〜4週間
見た目が落ち着いてきても、自己流の小顔マッサージや強い美容施術は行わず、フェイスバンドは案内された方のみ継続します。
1ヶ月以降
痛みや引きつれが落ち着いているか確認し、顔のマッサージ、美容施術、歯科治療などの再開時期を必要に応じて相談します。
これは当院における一般的な目安です。糸の種類や本数、挿入した位置、併用施術、腫れや痛みの程度によって異なるため、個別に案内された注意事項がある場合は、そちらを優先してください。
長持ちを左右するのは、術後の過ごし方だけではありません
糸リフトの効果を長持ちさせるためには、術後管理だけでなく、施術前の診断と治療設計が重要です。
たるんで見える原因は、人によって異なります。
- 脂肪が下へ移動している
- 頬やこめかみなどのボリュームが減っている
- 顎が小さく、フェイスラインが途切れて見える
- 皮膚の余剰やゆるみが大きい
- 広頚筋など、下方向へ引く筋肉の力が強い
下垂した組織を戻す必要がある場合は糸リフトが選択肢になりますが、ボリューム不足が主な原因であれば、ヒアルロン酸などで支えを補う方が適していることがあります。皮膚のゆるみが強い場合は、高周波治療を組み合わせることもあります。
原因を見極めず、糸の本数だけを増やしても、必ずしも長持ちするわけではありません。
Lab.clinic札幌大通では、減ったものを補うのか、下がった組織を戻すのか、皮膚を引き締めるのかを診察し、必要な方向・層・本数を設計します。
糸リフトの施術内容・料金・リスクを見るよくある質問
糸リフト後のマッサージは、いつからできますか?
当院では、内容にもよりますが、顔のマッサージや強い美容施術は施術後約1ヶ月控えていただくようご案内しています。
1ヶ月を過ぎても痛み、引きつれ、凹凸が残っている場合は、自己判断で再開せずにご相談ください。
大きなあくびをしてしまいました。糸が外れていますか?
一度大きく口を開けただけで、糸が外れたと判断することはできません。
強い痛み、急な左右差、新たな大きな凹み、糸が移動したような違和感がなければ、まずは無理な開口を避けて経過を見てください。気になる変化がある場合は、写真とともにご相談ください。
寝ている間に横向きになってしまいました
一度の寝返りで、直ちに施術結果が失われるわけではありません。
その後に強い痛みや急な輪郭の変化がなければ、過度に心配する必要はありません。可能な範囲で仰向け寝に戻し、頬への長時間の圧迫を減らしてください。
フェイスバンドは必ず必要ですか?
すべての方に必須ではありません。
当院では、糸の挿入位置、腫れ、生活環境などに応じて、就寝時を中心に案内することがあります。使用する場合も締めすぎず、医師から案内された位置と期間を守ってください。
歯科治療はいつから受けられますか?
治療内容や術後の痛み、開口の程度によって異なります。予定されている治療がある場合は、糸リフトを受けた時期と部位を歯科医師へ伝え、当院にもご相談ください。
痛みや感染など緊急性のある歯科治療は、ご自身の判断で延期しないでください。
1ヶ月を過ぎれば、どの美容施術でも受けられますか?
1ヶ月は一つの目安であり、すべての施術を一律に再開できるという意味ではありません。
糸の素材や挿入部位、受けたい機器治療の深さによって判断が異なるため、施術前に糸リフト歴を伝えてください。
まとめ|最初の1ヶ月は「何かをする」より「余計な力を加えない」
糸リフト後の約1ヶ月は、引き上げた組織と糸が落ち着いていく大切な時期です。
効果を長持ちさせるために、顔を固めて生活する必要はありません。
大切なのは、顔を強く揉む、無理に大きく口を開ける、頬を長時間圧迫する、ご自身で凹凸を直そうとする、といった不要な外力を避けることです。
フェイスバンドも、強く締めて糸を固定するためのものではありません。必要な方に、就寝時の圧迫や無意識の接触を減らす補助として使用します。
そして、糸リフトの持続を左右する土台は、術後の過ごし方だけではなく、施術前の診断、糸を入れる層・方向・本数の設計にあります。
Lab.clinic札幌大通では、脂肪の下垂、ボリュームロス、皮膚のゆるみなどを診察し、必要な治療を組み立てます。
参考文献
- Shi B. Group standardization of Chinese experts specification of operating techniques for facial embedded thread lift. Frontiers in Surgery. 2026;12:1750529. DOI: 10.3389/fsurg.2025.1750529
術後の強い顔面マッサージを避け、大きな顔の動きを減らすことなどを記載した専門家コンセンサスです。長期持続を保証する比較試験ではありません。
- Su D, et al. Experimental investigation of biostimulatory effects after polydioxanone thread insertion in a pig model. J Cosmet Dermatol. 2024;23(2):658–665. PMID: 37644781
糸周囲の炎症反応とコラーゲン形成を1、4、12、24、48週で評価した動物研究です。人での臨床的持続期間を直接証明する研究ではありません。
