2026年9月19日

当院では、フェイスラインをしっかり支える場合、左右合計8〜12本程度を使用することが多いです。必要な本数は、たるみの状態を診察し、動かす組織・引き上げる方向・支える範囲・糸の種類を考えた結果として決まります。
「6本と10本では、何が違うのだろう」「片側に何本必要なのだろう」。糸リフトを検討するとき、本数は気になるポイントです。この記事では、当院が本数を決めるまでに何を見て、どう治療を組み立てているかをご紹介します。
01当院が考える糸リフトは「加齢による変化を元の位置へ近づける治療」
顔の加齢変化は、皮膚が下がることだけではありません。骨格の変化、脂肪の量や位置の変化、皮膚や組織を支える構造の変化が重なって、頬やフェイスラインの印象が変わります。顔の脂肪はひと続きではなく、複数の区画に分かれていることも解剖研究で示されています。[1][2]
糸リフトが主に働きかけるのは、そのうちの下垂・移動した軟部組織です。軟部組織とは、皮膚や脂肪など、骨以外の組織を指します。
当院では、動かせる組織を見極め、自然な位置へ近づけることを大切にしています。目指すイメージは、「昔の自分の顔に少し戻す」こと。骨格や減ったボリュームまで糸で戻すのではなく、位置の変化に対して、糸が担える役割を考えます。
下がった組織を、自然な位置へ近づける

加齢前の位置
頬のボリュームが自然な位置にある状態。

下垂・移動
頬やフェイスラインの組織の位置が変化。

治療で目指す位置
動かせる組織を、自然な位置へ近づける。
02「何本入れるか」より「どこを、どこへ戻すか」
同じ「フェイスラインのたるみ」でも、口元のもたつきが中心の方と、頬から下顔面まで広い範囲の変化がある方では、治療の組み立てが違います。
当院では、まずお顔を診察し、気になる部分と、その変化に関わる組織を確認します。次に、組織を実際に手で動かすリフティングテストを行い、どの方向へ動かすと自然に整うかを確かめます。
- 01たるみを診る
- 02動かすべき組織を考える
- 03実際に動かして確認する
- 04引き上げる方向を決める
- 05必要な支持を設計する
- 06糸の種類を決める
- 07必要本数が決まる
ここで見ているのは、動かしたときの輪郭だけではありません。組織の動きやすさ、頬のボリュームの移動、左右差、表情との調和も確認します。そのうえで糸の種類と配置を考えるため、必要本数は診察の結果として決まります。
03日本人の顔立ちを考えて、引き上げる「方向」をデザインする
東アジア人の顔面骨格を調べたCT研究では、加齢に伴う変化が報告されています。欧米人の既報との違いも検討されており、顔立ちの背景を踏まえて治療を考えることは大切です。[3]
ただし、日本人という括りだけで、引き上げる方向を決めることはできません。頬骨の張り、顔の幅、頬の前方への立体感、脂肪量や組織の動き方は、一人ひとり異なります。
糸リフトの専門家合意でも、顔の形態に応じた治療計画が論じられています。これは特定の両針式吸収糸を対象にした報告であり、以下の診察手順は当院が行うデザインの考え方です。[4]
手で動かして、外側・上方向・その組み合わせを確認します
まず外側方向へ動かし、フェイスラインや頬の形がどう変わるかを見ます。次に上方向への移動を確認し、さらに両方向を組み合わせて、その方に合う位置を探ります。この引き上げる方向を、医療では「ベクトル」と呼びます。
実際に動かして、方向を決める

01 外側へ
輪郭と頬の形の変化を確認します。

02 上方向へ
頬のボリュームが移る位置を確認します。

03 組み合わせる
顔幅・頬の高さ・自然さを見比べます。
正面から顔が横に広がって見えないか、頬の一部が不自然に盛り上がらないか、口元とのバランスはどうか。輪郭が上がったかだけでなく、移動した組織が自然に収まるかを確認して方向を決めます。
04なぜ8〜12本程度使用することが多いのか
当院では、フェイスラインをしっかり支える場合、左右合計8〜12本程度を使用することが多いです。その理由は、必要な範囲を複数の糸で支える設計を重視しているためです。
例えば、頬から口元、フェイスラインまでを診たとき、それぞれで動かしたい組織や支えたい範囲は異なります。ひとつの部分だけを強く引き上げるのではなく、全体のバランスを見ながら、糸に担わせる役割を分けていきます。
必要な範囲を、役割を分けて支える

片側の走行と引き上げ方向の一例
① 頬からこめかみ方向へ
頬から口元の組織を、上方へ支える走行。
② フェイスラインから耳下方向へ
輪郭に沿う組織を、斜め上へ支える走行。
↗矢印:引き上げる方向
淡い色:支える組織の範囲
糸の支持を考えるときには、糸そのものの強さに加え、コグと呼ばれる小さな突起が組織を捉える働きや、捉えた状態を保つ働きも重要です。これらは糸リフトの機械的な仕組みを扱うレビューで区別されています。[5]
その仕組みを踏まえ、当院では糸の構造・組織の状態・支持する範囲を合わせて設計します。8〜12本は当院の診療で使うことが多い本数であり、全員に共通する最適本数という意味ではありません。
片側では何本になりますか?
左右均等に使用する場合、合計8〜12本は片側4〜6本に相当します。ただし、もともとの左右差やたるみ方を確認するため、必ず左右同じ本数・同じ配置にするわけではありません。診察では、使用する糸と本数を治療範囲と合わせて説明します。
054本・6本では少ない?
4本・6本だから効果がない、ということではありません。 部分的な変化や軽度のたるみでは、少ない本数で治療の目的を満たせる場合があります。一方、広い範囲を支える設計では、必要本数が増えることがあります。
判断のポイントは、たるみの程度と範囲、脂肪量、組織の動きやすさ、糸の種類・構造、挿入位置、引き上げる方向です。本数が同じでも、治療内容まで同じとは限りません。
8本・10本・12本のどれがよいかも、この組み合わせで変わります。「多く入れればよい」と考えるのではなく、その本数で何を改善し、どこを支える計画なのかを確認することが大切です。
06糸の「本数」だけでなく「役割」も考える
当院では、主に引き上げを担う糸に加えて、支持を補うサポートスレッドを使用するかどうかも検討します。これは治療計画上の役割の分け方で、製品を一律に二種類へ分類するものではありません。
主となるリフティングスレッド
下がった組織を動かし、移動した位置で支える役割を担います。動かしたい範囲や方向、組織の状態に合わせて選びます。
支持を補うサポートスレッド
主となる糸による支持を補助する目的で、追加を検討します。どの範囲に、どのような補助が必要かを診察して判断します。
例えば当院で扱うテスリフトは、コグのある糸と、その周囲の筒状のメッシュを組み合わせた構造です。メーカーは、メッシュの隙間への組織の入り込みを利用した支持の仕組みを説明しています。[6]
当院では、このような構造の違いも考慮して糸を選びます。糸の種類が変われば役割も変わるため、本数の比較と合わせて「どの糸を、何のために使用するか」を見ることが大切です。
07糸リフトだけでは「元に戻せない」たるみもあります
頬がこけて見える原因と、口元にもたつきが出る原因は、必ずしも同じではありません。当院では、気になる変化を次のように整理して治療を検討します。
たるみの原因から、治療を考える

減った
ボリュームの変化
状態に応じてヒアルロン酸など

下がった
軟部組織の下垂
糸リフトが選択肢

多い・余った
脂肪量・皮膚の余剰
脂肪や皮膚に対応する治療を検討

ゆるんだ
皮膚の弛緩
状態に応じて高周波(RF)など
骨格や脂肪のボリュームの変化によるくぼみには、状態に応じてヒアルロン酸などによるボリューム補充を検討します。下がった組織には糸リフトが選択肢になり、脂肪の量や皮膚の余りが大きい場合は、それぞれに対応する治療が必要になります。[1][7]
また、皮膚のゆるみには高周波(RF)などを検討します。RFによる皮膚の引き締めについては、複数の臨床研究をまとめた報告があります。[8]
これらの原因は重なることもあります。何が減り、何が下がり、何が余っているのか。 糸リフトで対応できる部分と、ほかの治療で考える部分を分けて説明することも、当院が大切にしている診療です。
08当院が目指すのは「引っ張った顔」ではありません
鏡を見たときに、輪郭だけが強く持ち上がっているのではなく、ご自身の顔立ちとして自然に感じられること。笑ったときの頬や口元にも調和があること。それが当院の目指す仕上がりです。
「昔の自分の顔に少し戻す」という目標を共有し、必要な範囲に、必要な役割の糸を使う。これを、医療としての美容医療のひとつの形として考えています。
09まとめ|本数は「治療計画の結果」
当院では、フェイスラインをしっかり支える場合、左右合計8〜12本程度を使用することが多いです。ただし、最初に本数を決めるのではなく、たるみの診察、組織を動かす確認、方向と支持範囲の設計を経て決定します。
本数に迷ったときは、「自分にはどのような変化があり、何を目的にその糸を使うのか」を診察で確かめてみてください。当院では、お顔の状態とご希望を踏まえて、治療の適否からご説明します。
